今週の一冊 第5


今週の独裁者

「彼が女性に求めるものは」とスターリンの娘はこう書いている、「非常に原始的でした。 晩年の18年 間、家政婦として彼の世話をしていたヴァレチカがスターリンの理想の女性像にぴったりの女ではなかったかと思います。丸顔で鼻がちょっと反り、肥っていて 清潔で、食事の世話が上手で、会話には決して口出ししませんでした」

ジョルジュ・ボルトリ(杉辺利英訳)『スターリンの 死』ハヤカワ文庫

 スターリンに仕えるのは、党員であれ、政府高官であれ、メイドさんであれ、大変だったようです。例えばスターリンの別荘の庭の草むしりをしているとし て、そこへ通りかかったスターリンがたまたま機嫌が良くて何か言葉を掛けたとします。そうすると、その女中はあとで秘密警察のお呼び出しがかかるとか。こ れほど緊張を強いられる職場にいたメイドさんも少なかろうと思います。そのスターリンに18年間も仕えた家政婦は、一体何を見たのでしょうか。彼女をテー マに「家政婦は見た!」とか映画を作ったら面白いかもしれない、とか考える人は少数派でしょうね。でもどうですか?「家政婦は見た! トロツキー暗殺指令 の出た日」とか? 「家政婦は見た! 金日成の密使」とか?・・・もうやめときます。

(2001.12.7.)

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