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今週の一冊 第6


今週の東西比較

 どうもれっきとした貴婦人なんぞよりも、小間使いとか爪磨きの娘のほうが日本人の好み にはあうらし い。だから(欧州への)留学生が往々にして恋などすると、こちらは学士さまでむこうは小間使いなもので首尾よく結婚するが、その小鹿のようだった彼女が日 本に連れかえったころから見る見る太りだすのは見るも恐ろしいくらいである。彼女はついに部屋一杯にふくれあがり、狭い部屋住みの身であれば、旦那は常に セミのごとく柱にしがみついていなければならない。

北杜夫『どくとるマンボウ航海記』新潮文庫

 大変有名な旅行記です。書かれたのはずいぶん昔のことで、描かれた国々の様子も相当に変わってしまったのですが(だいたいシンガポールが独立前の時 代)、しかし面白さは全く変わらないのです(と思います)。この引用部のように、笑ってしまう表現と鋭い観察とが見事に融合しています。個人的には、続編 では『昆虫記』も好きな作品です。引用部はイタリアでのこと、サンドイッチを食べているとき、店に入ってきた女性が「実に可憐で、かつジェロニモ大聖堂に あったマリア像のごとく端麗」だったので、店の人にあとで彼女のことを聞いたら近所の床屋に勤めているとの由、そこで抱いた感想なのですが、北杜夫氏は小 間使いより爪磨きのほうが好きなのかもしれません。いや、『怪盗ジバコ』に爪磨きの女性が出てきたから、というだけの根拠ですが。

(2001.12.14.)

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