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今週の一冊 第28


今週の衣料事情

 一九一五年のクリスマスには、バートン様の御一家は、全員で奥様の御実家へおいでにな りました。ベイジングストークの近くのシモンズ様というのがお祖母様で、子供の面倒を見てもらいたいからと私も同行を命じられました。
 シモンズ様のところでは、召使い全員に半クラウン銀貨(五シリングに相当)を封筒に入れてクリスマス・プレゼントにするならわしがありました。私も頂戴 しました。バートン家でも使用人にプレゼントをなさるのが恒例で、たいてい女中用の制服でした。これは多くのお屋敷でなさったことで、既成服を贈るか自分 で仕立てるための布地を渡されるのです。エプロンのときもありました。

シルヴィア・マーロウ(徳岡孝夫訳)『イギリスのあ る女中の生涯』草思社

 メイド系史料本としては定番なので、解説は省略します。・・・というのも手抜きなので、筆者の偏って視点からコメントを若干。本書は20世紀初頭の英国 で女中奉公していた女性への聞き取りをもとに纏められた貴重な証言です。個人的に面白かったのが、第一次世界大戦へのまなざしでした(戦史好きなもん で)。具体例を述べているときりがないのですが、同じ屋敷で働いている男性の召使が出征したり、オーストラリアから来た兵士と出会ったりする話がある割 に、どうも生活自体に戦時下の影響を余り感じないのは、平時から女中さんの生活が貧しかったから不自由を感じなかったからでしょうか。
 余談ですが、本書で 自らの経験を語った女中・ウィニフレッドは、兵士に対してかっこいいと憬れていたのに、その母は兵隊なんか人間のクズと信じ込んで、兵士との交際なんぞ断 固認 めませんでした。多分一次大戦までの英陸軍が、対植民地戦争しか想定していない志願兵による軍隊で、徴兵制による軍隊ではなかったためにこういう見方が生 まれたのではないかと思います。
 あと本書でちょいとばかり気になるのが、訳者後書きを読むとどうも本書を歴史記録というより「教育のための手引き」みたい に売り込もうとしてる節があるところです。こういう面白い史料を、説教のネタのような観点で使うのは、せっかくの歴史の三昧境へ分け入る機会を逃すことに なってしまうのではないかと、筆者などつい考えてしまいます。まあ考えすぎかもしれませんが、最後のページにマー○ス寿子の本の宣伝なんか載ってると、ほ ら、なんか、心配になってしまって。

(2002.5.12.)

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