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今週の一冊 第37


今週の洋装

黎明期におけるバスの女子車掌は物珍しさも手伝って大変な人気であった。これは、当時の 女性の職業の選択の幅の狭さとも関係があるのだと思う。特に街頭で見かける「職業婦人」の姿は希少価値があった。
 洋装の制服でさっそうと高級な乗り物イメージのバスで働く独身女性が好ましく先端的な存在として見えたことは間違いない。
 あたかも、一時代前のスチュワーデスを想像すれば当たらずといえども遠からずといった感じだったのだろう。
 市バスも制服を三越に注文してつくらせた。三越意匠部のフランス人ミス・ルースの考案(デザイン)による紺サージのワンピース、深紅のソフトカラーの制 服は三越の番頭が一人ひとりの採寸をして仕立てるという念の入れ方でこれが今でいうパブリシティ効果を大いに発揮したことは間違いない。

正木鞆彦『バス車掌の時代』現代書館

 現在路線バスはワンマンが当たり前になり、「ワンマン」という緑地に白い文字の表示もいつのまにか消え失せましたが、かつてバスは車掌を乗せる義務があ り、その車掌は殆どが女性だったのです。バスの女性車掌は大正なかばに登場し、洋服を制服に採用したことはエポックメーキングな出来事でした。しかし上記 のような輝かしい時代はすぐに過ぎ去り、バスの普及と共に車掌の労働環境はどんどん悪化していきました。運転手は本来は車掌の業務でない車体の清掃を車掌 に押し付け、会社は車掌が運賃をネコババ(「チャージ」といいます)するのではないかと疑ってみぐるみ剥いで身体検査をやり、乗客は「たかがバスガール」 と馬鹿にし、結果として車掌は求人難となってますます労働強化を強いられる悪循環に陥り、遂にワンマン化されてしまったのです。こうして、女性の洋装制服 のはしりであったバス車掌はほとんど無くなってしまったのですが、その実態を元車掌への取材で構成したのが本書です。バス車掌自体は過去の職業と言ってい いですが、この当時から無意味な規制や過剰な放送(バス車掌の頃は肉声ですが)とか乗客のマナーとか、今日の公共交通での問題がちっとも変わっていないの は呆れるほかありません。

(2002.7.13.)

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