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今週の一冊 第40


今週の大陸横断鉄道(連載40回記念引用多い目号)

 一八八三年までに、ハーヴェイはサンタフェ鉄道の沿線で一七の食堂を経営するようにな り、その質の高さは西部中で評判になっていた。(中略)
美人ウェイトレスが人気を呼ぶことを知ると、ハーヴェイは東部の新聞に「若い女性求む、十八歳から三十歳までの、感じがよくて魅力的で聡明な人」という広 告を出し、だんだんと男の給仕を女性に切りかえていった。圧倒的に男の多い西部では、これらの女性のほとんどがすぐに求婚されてしまうため、ハーヴェイは 雇用契約に、勤務して一年以内に結婚して退職する場合は給料の半分を違約金として返却するという条項をつけ加えた。そして、彼女たちに白いカラーのついた 黒いドレスを着せて白いエプロンを着けさせ、寮母が監視する寮で生活させた。一九世紀末の二五年間、ハーヴェイ・ガールは南西部の花であり、かなり多くの 伝説や戯れ歌の題材となった。たとえばつぎのようなものである。

 ハーヴェイ・ハウスを知らないか。
 モハヴィ砂漠を突っ切って
 インディアンのビーズ玉みたいに
 サンタフェ鉄道沿いにつながるあれだ。
 それがなければ食事はできぬが
 色気と食い気の抱き合わせとは
 ハーヴェイもうまいことを考えたもの。

 イタリアの荘厳な寺院も見たし
 トルコのすてきなモスクも見たが
 何よりも美しいと思ったものは
 アルバカーキで見たハーヴェイ・ガール。

ディー・ブラウン(鈴木主税訳)『聞け、あの淋しい 汽笛の音を』草思社

 アメリカ大陸横断鉄道の建設の過程を描いた本です。アメリカの鉄道はすべて私鉄ですが、大陸横断鉄道は莫大な投資を要する国家的事業として、国から厚い 補助を受けていました。鉄道沿線の広大な土地の払い下げ(最終的にはアメリカの国土の一割にも達する)や建設費の補助など。しかし企業の経営者たち(俗に 泥棒貴族 Robber Baron と 呼ばれます)は、ど いつもこいつも自分の利益にまっしぐら、政治家に献金しまくって鉄道会社に補助を受け、インディアンの土地を奪い、建設費を水増しして補助金を懐に入れ、 土地を移民に売りつけてあとの社会資本の整備はほったらかし、とまあ、むき出しの資本主義のドラマを描いているのが本書の主な内容です。
 しかし中には顧客の満足を考えるという奇特な(?)経営者もいて、その一人が引用部のフレッド・ハーヴェイです。当時のアメリカの鉄道には食堂車がな く、二、三十分程度停車して駅で食事を摂っていました。独占的な商売なので、大体に於いてサーヴィスは大したことはなかったのですが、ハーヴェイは料理も 店の内装 も質の高いものを提供するよう努力し、好評を博しました。ハーヴェイが契約していた、大陸横断鉄道の一つであるアチソン・トピーカ&サンタフェ鉄道の人気 も騰がったといいます。その 店のウエイトレスが引用部のように人気だったようですが、時代が時代なだけに見かけはまさにメイドさんです(同書213頁に写真あり)。それでも「色気と 食い気の抱き合わせ」ということは、ある意味、アメリカだけにアンミラのご先祖様なんでしょうか? 均一なサーヴィスを供するチェーンという点では、ファミレスの元祖とは言えるかもしれません。

(2002.8.2.)

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