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今週の一冊 第43


今週の民俗学

女中はもと働かねばならぬという意味で、他家奉公をしたものではなかった。教育と在附き とが その目的であったのが、追い追いに自分の家を維持するために、働いて金をとるというふうに女中はなったのである。けれども多くは古風な雇傭関係が保たれ、 その生活は保障せられていて、少なくとも雇い主の準家族員として待遇され、時には嫁入の支度までもしてもらうという風があった。
 (中略)いわゆる欧州大戦による好況時代には賃金の多い女工を志願するものが多く、だいぶ減少したが、今日もなお女性の労力配賦の上には、いくぶん古風 な家の繋がりを保存して重要な役割を演じているのである。

柳田國男『明治大正史 世相篇』講談社学術文庫

 柳田國男といえば、『遠野物語』などで民俗学の草分け的存在としてよく知られています。その柳田が、明治以後の激変した日本の有様を描いたのが本書で す。普通の歴史の本と違い、固有名詞を挙げることを努めて廃し、名もなき普通の人々の生活がどう変化していったかを叙述しています。本書が執筆されたのは 1930(昭和5)年ですが、その当時の人々にとって身近にごく普通であったものが、明治大正期に如何様に新たに形成されたのであったのか、を述べていま す。これを現在の我々の視点から読むと、なんとなく昔からあったように思われ、「日本の伝統」のように感じられる生活スタイルというものが、実は明治大正 期に形成され、この本が書かれたころに定着した様式であることが極めて多い、ということが判ります。「伝統」のように思えたものは、大概は「じいさんばあ さんが子供のころの最新スタイル」でしかないんですね。「創造された伝統」にも一脈通じるところを感じます。
 引用部は第十一章「労力の配賦」から。英国のメイドさんも、産業革命以前の労力配分としては「ライフサイクルの一環としてのサーヴァント」といい、ここ に書かれた日本のリクルート事情に近いものがあるように感じます。日本は産業革命の突入が英国と比べ一世紀は遅れていましたので、その状況から現代への 突っ走り方ではいろいろ相違点がありそうです。あと「家との繋がり」という点では、「女中類従」の第1回参照。

(2002.8.25.)

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