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今週の一冊 第48


今週のラブレター

「これらの手紙は自分自身でもってゆくこと。乗馬にて、黒ネクタイ、青色フロックコート 着用。手紙はいたましき様子にて門番にわたし、そのとき、目に深き憂愁をたたえること。もし小間使などを見かけたときは、そっと目をぬぐう。小間使に言葉 をかけること」
 すべてはそのとおりに忠実に実行された。

スタンダール(桑原武夫・生島遼一訳)『赤と黒』 (世界文学全集)河出書房

 先週に引続き、19世紀の名作文学、今週はフランスから。説明するまでもない周知の作品です。『二都物語』とはギロチン繋がりですね(読めば判る)。 『赤と黒』というのは共和派と聖職者との象徴だそうです。巫女とメイドのわけがありません。『赤』は軍服で『黒』は僧衣を表すと昔聞いた覚えがあります が、僧衣はともかく軍服ではないようです。確かにこの頃、赤い軍服といえば仏軍じゃなくて英軍でしょうね。
 さて、引用部は、主人公ジュリアン・ソレルが、ある事情から愛してもいない元帥夫人に恋文を送ることになったところ。何せそういう事情ですから、手紙の 文面もある貴族から借りた恋文の例文集からひたすら書き写すことになります。しかもその例文集にはご丁寧に手紙の渡し方のコツまで書いてありました。それ が引用部です。将を射んとすれば先ず馬を射よ、つまり貴婦人を篭絡せんとすればまず侍女をてなづけよ、てなわけですね。これを侍女側から見た対応方法は、 以前紹介のスウィフト『奴婢訓』参照のこと。
 余談ですが個人的に本作品は、主人公とその愛する女性たちもさることながら、周辺人物どもの俗物ぶりがなかなか印象に残ったりしたのでした。町長とか、 いいキャラクターですね。

(2002.9.28.)

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