今週の若主人 小間使は寝椅子に腰をおろすと編み物を始めました。私たちのことなどまるで知らんふり のようでした。アロイスと私は、おもちゃの兵隊でいっぱいにしたテーブルの前に座っていっしょに遊びはじめました。 突然アロイスが立ち上がって小間使のそばへ歩み寄り、その正面につっ立つと、小間使の大きく突き出した乳房をぎゅっとつかみました。私はすっかり驚い て、声も立てずにその場にじっとしていました。小間使はアロイスの手をふりはらうと、 「だって、アロイス坊ちゃん――」(中略) 「いいんだよ。ペピはもうなんでも知ってるんだ」 アロイスはそう言うと、小間使のぷりぷりするような大きなお乳をもう一度つかみました。 小間使はもう若主人のするのにまかせ、抵抗しようとはしなくなりましたが、それでも私のことが気になるようでした。 「そりゃペピちゃんがわけ知りなのはわかりますよ。でももし、よそへ行ってしゃべったりされたら――」 作者不詳(足利光彦訳)『ペピの体験』富士見ロマン 文庫 先週はドイツ出版とされる古典エロ小説でしたが、今週はオーストリア=ハンガリー帝国が誇る(?)1908年出版と伝えられる古典エロ小説であります。 日本語版はかの富士見ロマン文庫の初回配本で出たものです。時は19世紀中葉のウィーン、貧乏な職人の娘ペピの、5歳の時に始まる性の遍歴が綴られ、13 歳で娼婦デビューするところで終わるという、まことにもってなんだかなあという素晴らしい内容です。一度は反省したペピが教会に告解に行って、話を聞いた 司祭に逆にやられてしまうというエピソードがありますが、カトリック教会の密室の中でのそういう事件は、現実にもそれに近いものがあるようです。引用部はペピが大家の息子アロイスとそういう関係に耽る場面で、アロイスは実は日常的に自分付きのオールドミスの小間使いとそういう関係にあったという お話。ちなみにアロイスは12歳です。ようやるな。主人と使用人がそういう関係になる場合は、往々男の側の年齢が高いことが多いものですが、まったく逆の パターンもないわけじゃなかったのかもしれません。 ところで、この小説の中でペピは学校に通っていますが、そこには制服があったと記述から読み取れます。当時の英国の事例では、小学校の女の子の制服はか なりメイド服に近いものがあるので、ペピが着ていた制服もそうかもしれません。制服姿であれなシーンもちゃんとあるので脳内補完にどうぞ。 さて、ドイツ、オーストリアと古典エロ本が続きますが、来週こそは真打の登場です。読者諸君、刮目して次回を待て!(笑) (2002.10.19.) |