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今週の一冊 第52


今週のハプニング(一周年ご愛読感謝&コスカ参加新刊完売記念特大号)

 ある日、私が学校から帰って来ると、料理女のメアリが表口に立っていた。彼女は二十六 歳に なる愛敬のいい女で、ディジーの花のようにすがすがしかった。すると新しく雇われた若いメイドが父親の荷馬車でやってきた。父親は市場向けの園芸師で、私 たちの家から数マイルのところに住んでいた。彼女は十七歳くらいで、新鮮な、器量のいい娘だった。(中略)
 彼女が下りようとするとペチコートの裾が荷馬車の端に引っ掛かってしまった。その時私はちらっと見たのだ。白いストッキング、ガーター、両腿、そして
(自 主規制)。それはほんの一瞬で、ペチコートの裾が元通りになるとすべてが隠れてしまった。(中略)
 私は他のことは何一つ考えることができなくなかった。新しいメイドがお茶を持って来てくれた時も彼女から目を離さなかった。夕食の時も同じだった。母が 彼女のことを「よさそうな娘だね」と言ったので、私は嬉しくなった。

作者不詳(佐藤晴夫訳)『我が秘密の生涯』ルー出版

 筆者自身信じ難いことに、この阿呆な連載もなんと今回でちょうど一周年を迎えることになりました。また今週はコスカ9号店が開催されたわけですが、これ はMaIDERiAのサークルとしての即売会参加一周年でもあります。
 今週紹介いたしますのは、その節目にふさわしい、歴史に残る史上最大のエロ小説『我が秘密の生涯』であります。本書は19世紀英国を舞台に、ある男の生 涯をかけた性の記録が自伝の形を取って延々と綴らたもので、その文量たるや原書は11巻にも及ぶとの由です。このルー出版の版は、1998年に出た4巻本 で、各巻大体300頁で合計1500ページに達しますが、これでも実は2316頁にもなる原本を圧縮したものだそうです。日本では過去に田村隆一訳の11 巻本が学藝書林から、三巻の縮刷版が富士見書房から出ているとのことです。 本書の作者は不明とされていますが、ヴィクトリア朝時代の書誌学者にしてポルノグラフィ収集家で『禁書大全』をものしたヘンリー・スペンサー・アシュビー (1834〜1900)という説が有力です。
 さて、本書は性という側面から綴るヴィクトリア朝の歴史という趣があり、その意味でも高く評価されているのですが、したがってヴィクトリア朝時代にその 人口の多さを誇った(かどうかは分かりませんが)メイドさんも、お相手としてそれはもう名前を覚えることもできないほど大勢登場します。その描写を拾って いけば、メイドさんについて少なからぬ知識を得る事もできるでしょう。本書に関する先行研究もあることですし、筆者も登場メイド一覧作成など、そのうち取 り組んでみたい課題ですが、残念ながら今回は時間の都合で見送ります。
 この小説の主人公は、紳士と呼ばれうる階級の人ですから、当然家にはメイドさんがいますし、その身近にいるメイドさんこそ、彼の長い長い性の遍歴の出発 点となったのでありました。引用部は、主人公が童貞を捧げた相手として回想しているメイドさんの登場シーンであります。この箇所からは、当時の女性は下着 としてはペチコートしかつけておらず、ショーツどころかドロワーズも普及していなかったことが読み取れます(別の箇所で作者自身がそう書いています)。ま た、白いストッキングを着用していることもポイントのようです(別の箇所で作者はストッキングは白じゃないとやだとか抜かしています)。
 こんな感じでメイドさんが夥しく出てくる本書は、メイドエロゲーを百本束ねてもかなわない迫力を持って読者を圧倒します。皆さんも機会があればご一読す ることをお勧めします。
 ちなみに登場女性キャラクター中最若年は十歳だったりします。それが縁で、今は亡き Alice Club で斉田石也先生が健筆を振るっておられた書評コーナーに本書が出てきた(1998年7月号)のが、筆者が本書を知ったきっかけでした。その書評中の、
 また、使用人の中には、十四、五歳の女性も数多く登場するが、当時 の社会通念からは別に珍しい事ではなかったようで、この年頃の少女(現代風に言うと) の半数くらいは非処女だったり、特定の恋人がいたりする。
 という一節は、いたく筆者の妄想を刺激し、筆者のメイド研究の一つの原点になったのかもしれません(苦笑)。その後筆者は間抜けな事にこの一節の出典を 綺麗さっぱり忘却してしまい、あとになって確かめようと闇雲に書籍を漁り、図書館の社会史の棚を片っ端から読んでみたりしたものでした。その時の蓄積が ブックコレクションに結実したという面も実はあります(笑)。最近本書をネット通販で入手し、その時に本書の書評の存在を思い出して、やっとこさこの原典 に辿り着いたのでした。そういう意味で、個人的にもいささか思い入れのある一書なのです。

(2002.10.27.)

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