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今週の一冊 第53


今週の名探偵

「・・・長年つとめている三人の女中は、絶対に信用できるものばかりです。もう一人、 ルー シー・パーという二番目の小間使いは、やとい入れてまだ数ヶ月にしかなりません。しかし、りっぱな推薦状をもってきていますし、いつもたいへんよくつとめ てくれています。ただ、たいへんきれいな娘でして、ひかされた男たちがときおり宅のまわりをうろついていることもあります。これが玉にきずというわけです が、わたしどもでは、どこからみても申しぶんのないよい娘だと思っています。・・・」

コナン・ドイル(阿部知二訳)「緑柱石宝冠事件」
(『シャーロック・ホームズの冒険』創元推理文庫)

 連載の第一回はクリスティで始まりましたから、再開(編注:前回から諸事情により4ヶ月ほど中断していました)もそれに倣って、ヴィクトリア朝英国のイ メージを日本人に定着させるにもっとも貢献したであろう、 ホームズ譚から採ってみました。
 残念ながら、ホームズものの中ではメイドさんがクリスティの作品のような活躍をすることはないのですが(事件で一番重要な役割を果たしたのは「マズグ レーヴ家の儀式書」でしょうか)、登場自体はちょくちょくしていますので、明らかに「美人」と書かれている作品から引用してみました(笑)。ちなみに新潮 文庫では(延原謙訳)「第二小間使い」と書かれています。多分客間女中 parlourmaid のことではないかと思われます。
 ところで、ホームズは様々な出版社から出ていますが、この東京創元社の場合、最後の短編集である『シャーロック・ホームズの事件簿』は「著作権の関係で 特定の出版社からしか翻訳・出版することが許されず、」そのため他のホームズものが1960年代に出ているのに『事件簿』のみは1991年に深町真理子氏 の訳で出ています。そして、阿部知二氏の場合は女性家事労働者を「女中」「小間使い」などと訳しているのに、『事件簿』は「メード」となっています。要す るに、この間に「女中」という日本語が身近でなくなり、「メイド」「メード」という片仮名語の方が通りが良くなったのですね。三十年の時代を経ると、こん なところにも変化が現れます。

(2003.2.15.)

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