今週の詐欺師 「・・・英国では召使の待遇はどうなの? あたしたちが黒ん坊を扱うよりも上等ですか?」 「とんでもない! あちらでは召使はものの数には入りませんよ。犬よりもひどい待遇です」 「あたしたちのように、お休みをやらないの? クリスマスとか新年の一週間とか七月四日の独立祭とか?」 「まあ、ちょっと聞きなさい! それだけ聞いても、あんたが英国に行ったことがないのがわかりますよ。・・・年がら年じゅう、休みなんてないんです。サーカスにも行かないし、芝居にも行 かないし、黒ん坊の見世物にも、どこにも行かないんですよ」 「教会にも?」 「教会にも」 マーク・トウェイン(村岡花子訳)『ハックルベリ イ・フィンの冒険』新潮文庫 当たり前の話ですが、ヴィクトリア朝のメイドと現在の日本は秋葉原界隈で通用するメイドさんの概念とは大きく異なっているわけでして、それは時間的地理 的隔絶を思えば当然といえば当然なことでしょうが、同時代的にも大西洋を隔ててみたら、やっぱり情報が伝わっているわけでもないというわけでして、引用し たのは皆さんご存知のトウェインの名作です。『トム・ソーヤーの冒険』ともどもお読みになった事がある方も多いかと思います。引用部はハックが心ならずも詐欺師どもの片棒を担ぐ羽目になってしまい、「英国人牧師の従者」のふりをして少女にでまかせの英国の話をしながら、何とか 正体を見破られないように奮闘しているシーンです。まあ、この当時のアーカンソー州の人間の外国への知識なんてこんなもんでしょうが、今だって大して変 わってないんじゃねえかとブッシュ大統領の顔をテレビで見ながら思う今日このごろなのであります。 (2003.4.28.) |