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今週の一冊 第65


今週のフェティシズム

 今になって、自分がどんな風に成長して来たのかを正確に辿るのはかなり難しい。昔から ずっ と女性の手が気になっていなかったと言ったら嘘になるだろう。(中略)私は母の手に夢中で、幼い頃から母の手をぴしゃぴしゃ叩いたり、なでたりして弄んで いた。家のメイド達や家庭教師、家で働いている女達の手も魅力的だったな。(中略)
 手袋をした女性の手を、初めて美しいと感じたのがいつのことだったのか、今となっては思い出せない。あの頃は女性が手袋をするのは当然だったし、手袋無 しで外出する女性は滅多にいなかったんだ。(中略)一度、メイドが母の部屋を整理するのを私が手伝った時、母が引き出しの中にしまっていた三種類の手袋 を、どうしてもそのメイドに着けてもらおうとして彼女を困らせたこともあった。その当時も、その後の数年間も、なぜ自分がこんなにも手袋に引き付けられる のか、自分でも解らなかったし、訊かれても説明できなかったと思うね。ただ好きだからとしか言いようがなかった。まあ今思えば、その時は何も知らない子供 だったが、やっぱりきれいな女性の手に着けられた良質の手袋を見たり触ったりすると、私は性的に興奮していたんだ。

作者不詳「ビロードの滴」
(『SALE2・VOL17・NO44』フィクション・インク/八曜社)

 なんでこんな本、というか雑誌が手許にあるのか自分でもよく分からないのですが(買った本屋にはよく行っていましたが、バックナンバーもこれ以降の号も 見たことがありませんでした)、なかなか面白い一冊でした。この号は性倒錯特集で、そのひとつの例としてフェティシズムの人の手記が取り上げられており、 引用部はその一節です。どうも後期ヴィクトリア朝(とはメイドさん全盛期)ころに生まれた人のようですが、この人が晩年を迎えるころには手袋を付けるとい う文化はほとんど衰亡してしまいました。ですから手袋フェチというのは今となっては生まれようもない性癖となるのでしょうが、それだけにこの人の事例はメ イドさんがいた時代を良く反映しているのではないでしょうか。
 ところで、この本にはジェラード・マランガという写真家の展示会の案内が載っていたのですが、その広告として? 掲載されていた写真(もしかしたらこの写真展とは関係ないページ埋めなのかもしれませんが)の、ネクタイをした女性の姿は、筆者のメイド服その他制服系衣 装への傾倒のひとつの起点になったのではないかと今にして思うのであります。この雑誌、この号には香山リカが書いているし、バックナンバーの案内を見ると 岡崎京子だとか荒俣宏とかの名前もあって、もし古書店でバックナンバーを見つけたら買ってみようかなどと思っています。売ってるのを見たことがないんだけ ど。

(2003.5.17.)

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