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今週の一冊 第67


今週のフレンチメイド

 私はロンドン直輸入のメイド用ラバーコスチュームを見たが、それはL・ブニュエル監督 の 『小間使いの日記』に登場した、あの典型的な黒いメイドの制服であり、ミニスカートの前に白いエプロン(フリル付き)が、可愛らしく付いていた。アリスと ラバー ――アリスのような少女がこのラバーを素肌にフィットさせた姿を想像して、私はその“差異の美学”に、陶然としてしまった。固有のスタイル(=制服)のも つイメージの属性と、ラバーという材質の放つ雰囲気の落差――そう、どんな場合でも、ズレはつねに煽情的だ。

北原童夢『フェティシズムの修辞学』青弓社

 官能小説の書き手として知られている北原童夢氏が、さまざまなフェティシズムの世界について蘊蓄を傾けた刺激的に面白い一冊です。その中でレザーやラ バーの装身具の世界の魅力を叙した箇所から引用しました。ミニスカでラバーなメイドさんといえば、要するにエロゲーはじめ各種エロメディアでおなじみフレ ンチメイドであります。その魅力を北原氏は引用部のように説かれているわけですが、むしろいわゆる「メイドさん好き」な人たちからは、邪道だとか「えっち なのはいけないと思います」とか、とかく評判は悪い存在ですね。
 しかし、筆者が読んだ僅かばかりの文献から無謀にも推測したことですが、メイドさん華やかなりし英国ヴィクトリア朝での、強固な道徳観念と実状との乖離 から生まれたSM的世界が、第一次大戦後ボンデージの誕生につながり、それが第二次大戦後アメリカに渡って一挙にブレイクし、そして日本にやって来た―― というような壮大な流れがどうやらあるようなのです。ということは、一見邪道に思われるフレンチメイドこそが、案外ヴィクトリア朝文化のれっきとした末裔 とも考えられるのではないでしょうか。なあんて、それこそ通念とのズレのもたらす煽情に、筆者自身が酔ってるだけかもしれませんけど。
 北原氏によると、この手のラバーやらレザーやらのグッズは、普及に功あった米国の製品より、イギリスのそれの方が「洗練された美意識」があるそうです。 これも伝統の力なんでしょうかね。いろいろ眺めて、いろいろ考えてみるのも面白そうです。

(2003.5.31.)

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