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今週の一冊 第70


今週の結婚詐欺

 概して申し分のない押込み強盗というのは内部の者の手引きによる犯罪だった。つまり召 使いを抱きこんだ犯罪である。(中略)
 内部の者に手引きをしてもらうには、もう一つ既に雇われている使用人の一人と渡りをつけるやり方があった。多分これが最も一般的な手口であろう。渡りを つける方法はいくらでもあった。裏口にやって来て不要品を買って行く商人や行商人、召使いが利用しているパブでのらくらしている者や競馬の予想屋、一晩だ け雇われるウェイター ――その全てが誘惑者になり得た。手癖の悪い女中が、持ち物を調べられる前に小さな貴重品を処分したがっているような時は、渡りをつける絶好のチャンスと なった。また、仲間はまだ雇われているのに解雇された召使いも利用できる。とりわけ召使いは殆ど女性であり、大きな家を除いては、彼女らは大抵付き合える 男性にこと欠いていた。すんなりと仕事をしたい泥棒にとって、「魅惑的な求婚」ほど役立つものはなかった。

ケロウ・チェズニー(植松靖夫・中坪千夏子訳) 『ヴィクトリア朝の下層社会』高科書店

 泥棒のほか乞食や賭博者、売春婦などヴィクトリア朝の下層社会について、有名なメイヒューの作品などに依拠して叙述した本です。
 引用部は押込み強盗について触れた章からです。強盗の準備のために、予め強盗の側が仲間を使用人に仕立てて送りこむこともあったようですが、引用部のよ うに召使いを抱き込む他、だまして家に入りこむ方法もあったようです。そういえばシャーロック・ホームズも「恐喝王ミルヴァートン」では鉛管工に化けてメ イドさんをたぶらかし、家の鍵を開けさせておいて侵入する、なんてことをやってましたっけ。
 本書は研究書というより読み物なので、そして1970年というかなり以前に書かれた本なので、売春に関する章などを読むといささか見解に古いところが感 じられます。そこらへんについてもうちょっと今日的な研究の成果を、次回は見てみることにしましょう。

(2003.6.21.)

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