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今週の一冊 第73


今週の経済学

かりそめにも紳士の執事や使用人が、あたかも平素の職業が農夫や牧夫であることを窺わせ るよ うな未熟なスタイルで、主人の食卓や乗り物に関する職務を遂行したら、それは著しい不満の種になろう。そのような不細工な仕事が意味するのは、主人の側に 特別に訓練された使用人のサービスを確保する能力が欠けている、ということである。すなわち、熟練をつんだ使用人に厳格な作法に従った特別なサービス能力 を身につけさせるために必要な、時間と労力の消費と教育費支払いの能力がない、ということを意味する。使用人の行為が主人の資力不足を証拠立てる場合に は、それは、自らの何より重要な目的を踏みにじることになる。というのは、使用人の主たる効用は、彼らが持つ主人の支払い能力の証拠にあるからである。

ソースティン・ヴェブレン(高哲男訳)『有閑階級の 理論 制度の進化に関する経済学的研究』ちくま学芸文庫

 ヴィクトリア朝英国とかでメイドさんを雇う理由に、階級社会における体面を保つためという理由が挙げられます。しかしまたなんで、「体面を保つ」必要が あったのでしょうか、またその手段が使用人を雇うことだったのでしょうか。本書を読めばその原因の一端を窺い知ることが出来るかもしれません。
 ヴェブレン(1857〜1929)はノルウェー系アメリカ人の経済学者で、「アメリカが産んだもっとも偉大なアメリカ批判者」とも言われるそうです。 19世紀末のアメリカは経済的に成長し、それに伴い派手な消費文化が花開きました。ヴェブレンはその風潮を踏まえ、このような消費文化の本質は、以下に自 分が偉大であるか=多くの富を持っているかということを見せびらかすための「顕示的消費」であると断じます。そして、直接に生産的労働に従事することの無 い「有閑階級」がその消費の主な担い手で、彼らが社会の制度(ヴェブレンの用法では、制度とは思考の習慣ということだそうです)を形作ってきたのです。だ から、「顕示的消費」をすることが名誉ある、立派なことと皆が思っているのだと。引用部はその一例としての使用人の意味を述べている箇所です。
 なにせ、要約を述べることも僅かな紙数では敵わぬほど示唆されるところが多く、じっくり読みたい一冊ではありますが、文章は到底読みやすいとは言い難い ので、それなりの覚悟を持って読んで下さい(苦笑)。

(2003.7.12.)

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