今週の一冊 第75


今週のロリコン

「こんな話はどうだろう。制服マニアの男が主人公だ。(中略)メイドさんを出しておこ う。男に仕えている。だが男には気にくわない。メイドが従順であることが気にくわない。メイドが従順でないことが気にくわない」
「どういうこと?」
「自己嫌悪なんだよ。人間は自分を通じてしか他人をはかることはできない。男には自分自身を直視する勇気がない。メイドの姿に自分を見る・・・そのことが 不快なんだ」
(注:引用にあたっては適宜句読点などを加えた)

鎌やん「制服考」
(『新世紀鳥獣戯画 アニマル・ファーム』コアマガジン ホットミルクコミックス)

 メイドものマンガとして『花右京メイド隊』がありますが、その作者もりしげは、以前誰も真似できないような特異な作風のロリ系マンガを描いていました。 そして、同じく誰にも真似できないような特異なロリ系のマンガを描いているのが今週取り上げた鎌やん(昔はカマヤン)であります。方向は異なれど独自の境 地を持つ二人、一時期は合同で同人誌も出していましたが、いろいろあったらしく今はそういうことはしていないようです。
 さて、引用部は表題の通り制服を題材に、E・フロムの唱えたネクロフィリアという概念について考察した一編であります(念のため書き添えておきますが、 この本は成年コミックです)。女の子が着る制服と言ったときに、その具体例として真っ先にメイドさんが出される、というのが妥当かどうか(メイド服はここ で言う「制服」とは別カテゴリの「お仕着せ」ではないか)は論点たり得るかと思いますが今はさて置いて、「メイドの姿 に自分を見る」という指摘は、メイド趣味関係者にとって重要なのではないかと思うのであります。
 他にもメイドさんについて触れた話も収録されているし(先週の一冊は本書からの孫引き)、アリスのイメージからか幼女の服がメイド服だったり、巻末には なんと宮台真司との対談まで収録されてたり、面白い一冊です。「抜けません」と鎌やんは自分のサイトで書いてたし、その通りだけど。
 余談ですが、筆者が持っている宮台真司の言説が載っている本は、本書だけだったりします(笑)

(2003.7.27)

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