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今週の一冊 第83


今週のバトル・オブ・ブリテン

 平時とうってかわる何かの迷惑がふりかかってきても、文句をいう者もあまりいない。ケ ント 州ホームフィールドの旧家スミス家では執事のウィリアムが、頭上の空中戦がひと区切りつくごとにビロードのようにみごとな芝生に出てきては、まるでいつも している食卓のテーブルクロスをブラシで掃きとるのと同じように、芝生にとび散った弾片や銃弾を黙々と拾い集めて捨てていた。またサセックス州ワージング のアーレット家でも、令嬢ベラのお付の女中は同じくらいに即物的だった。「さァお嬢様。デザートのプディングを召し上がれ。……あらあら! ほら、裏のお 庭を機関銃で射っておりますわ」

リチャード・コリヤー(内藤一郎訳)『空軍大戦略』 ハヤカワ文庫

 時は1940年、ドイツ軍の電撃戦の前にフランスはあっけなく敗れ、イギリス軍はほうほうの体でダンケルクから英本土へ撤退します。ドイツ軍は英本土上 陸作戦を 行うため、制空権の確保を狙い空軍による攻撃を仕掛けます。これをバトル・オブ・ブリテン(英本土航空決戦)といいますが、まあその詳細は類書がいっぱい ありますのでそれに譲ります。本書はその中の代表的なものですが、なんでこんな変な題名になっているかというと、そもそもこの戦いを扱った1969年製作 のイギリス映画があって、それの邦題が『空軍大戦略』だったからであります。ちなみにこの映画は、空中戦シーンを全部、飛行機を実際に飛ばして撮ったとい う、CGばやりの昨今から見ればまこと牧歌的な映画でした。
 さて引用部は、頭上で毎日空中戦が繰り広げられている時の英国人の生活の一こま。飛行機が機銃掃射やら爆撃やらしたくらいであたふたしないのが、紳士の みならず英国人のたしなみ、だったのでしょうか。それとも、戦争の危険を日常と同じ仕事に没頭することが忘れさせてくれたのかもしれません。

(2003.11.30.)

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