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今週の一冊 第90


今週の進駐軍

(軍人一家の朝食風景を写した写真に付けられた説明)
占領軍の日本での快適な生活ぶりを伝えた米海軍の一連の写真のひとつ。1947年8月。「横浜に住む海軍軍人の125家族では、日本での生活費が高いとい う声はまったく出ない」「ひと月27ドルで、5部屋から7部屋を占有し、家具・レンジ・電話・冷蔵庫完備、下男付き」というキャプションがついている。日 本人ならこの朝食の風景は奇妙に思うだろう。右側に立っているメイドは、この場には不似合いの晴れ着を着ているからだ。

ジョン・ダワー(三浦陽一・高杉忠明訳)『敗北を抱 きしめて 第二次大戦後の日本人』岩波書店

 敗戦後の占領期の日本を描き、アメリカではピュリツァー賞を受賞した本です。日本でも大きな反響を呼び、最近写真を倍増した増補版が出ました(引用元は 元の版です)。膨大な資料に基づいて執筆され、さらに翻訳に当たってはすべての引用元のオリジナル日本語史料に当たるという、根気強い作業が行われていま す。その作業中にあった笑い話で、元の本に「フィジー新報」なる新聞が引用されており、はてフィジーの日本人移民が作った邦字紙かと思って調べてもそんな ものはなく、よくよく原文を見たらフィジー Fiji じゃなくて「時事 Jiji 新報」だったということがあったそうで(イタリック体にすると大文字の F と J はよく似ている)、そんな細部までチェックを入れて翻訳されているのであります。
 本書の読みどころについては人により意見が様々で、それはむしろ本書の豊かな内容を示す一証左といえましょう。しかし、イラク戦争前にネオコンがこの本 を読んでイラク戦争後の統治の構想を練っていたと雑誌の記事で読んだ覚えがあるのですが、さすがにそれには愕然としました。日本にはあった敗北を抱きしめ る要素は、イラクにあるとは到底思えないんだけど…人は自分の知りたいことを知りたいようにしか知ることができないのでしょうか。そういえば、テレビのイ ラク戦争ニュースで、アメリカで「CNNみたいなリベラル報道はもういらない。FOXテレビマンセー!」(FOXテレビというのは、政府寄り愛国的好戦的 報道によりアメリカで人気になったテレビ局)とプラカードを掲げてデモをしている人々を見たときは、ぎょっとしました。
 さて、身に合わない偉そうな話はこの辺で一端切り上げて、引用部の検討に参りましょう。筆者は以前、戦前の婦人雑誌を少しばかり調べたことがあるのです が、その中でアメリカの「文明化された」生活は憧れとして描かれていました。ちなみに、日常模範とすべき倹約の精神なんかに関してはドイツが出ていまし た。え、英国式使用人の紹介? ねーよそんなもん。閑話休題、そういうわけでアメリカ人が大量にやってきたことによる日本の生活習慣への影響も少なからざ るものがあったと思われますが、使用人を「メイド」という呼称で呼ぶことを日本人が知ったのも、進駐軍の影響ではないかと筆者は考えています(連載第22回参 照)。今のところ見つけた戦前の「メイド」というカタカナ語の用法は、家庭の女中ではなくてホテル従業員をさすものばかりなので(連載第47回参 照)。
 なお、この「メイド」、衣裳は和服であります。

(2004.2.4.)

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