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今週の一冊 第1回


今週の推理小説

「わたくし、もともとあの娘はあまり好きじゃありませんでした。使用人としては申し分あ りませんでし たけど。きちんと“はい、奥様”と言いますし、制服の帽子やエプロンを着るのも文句は言いませんし(このごろのメイドは、たいてい嫌がるんです)、パー カーのかわりに玄関に出て応対しなければならないときも“お留守でございます”とすらすら言えますし、たいていの小間使いは、お食事のお給仕をするとき、 妙におなかをごろごろいわせるものですけど、あの娘にはそんなところもありませんでしたし―あら、わたくし、何のお話をしていたのかしら?」

アガサ・クリスティ(田村隆一訳)『アクロイド殺 し』ハヤカワ文庫

 日本人のメイドさんのイメージ形成にあたって、クリスティはもっともそれに貢献した作家かもしれません。筆者自身のイメージ形成も多分そうではないかと 自分では思っ ています。ヴァン・ダインの「推理小説二十則」では「召使なんぞのような重要じゃないキャラクターが犯人なんてダメ!」という、偏見にみちみちた項目があ りますが、クリスティ作品ではメイドさんがしょっちゅう登場し、しばしば重要な役を演じます。それは看護婦という職業婦人の経験を持った、クリスティなら ではのまなざしといえるでしょう。そのクリスティ・メイドの中でも個人的に一押しなのが、あのトリックで有名な『アクロイド殺し』のアーシュラ・ボーンで す。上の引用は、登場人物が彼女を評したものですが(パーカーは執事の名)、彼女の秘められた真実とは……って、推理小説なのでこれ以上は書くわけにはい きません。

(2001.11.9.)

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